「羊をめぐる冒険」の翻訳(47)
1 鼠の最初の手紙(4)鼠の手紙は年もおしせまった十二月二十九日に僕のアパートの郵便受けにくしゃくしゃになってつっこまれていた。回送の貼り紙がふたつも付いていた。あて先が昔の住所になっていたためだ。なんにしてもこちらから知らせようがないから仕方ない。
僕は薄緑色のレター?ペーパー四枚にぎっしり書き込まれた手紙を三回読み返してから、封筒を手に取って半分ぼやけた消印を調べた。それは僕が名前を聞いたこともない街の消印だった。僕は本棚から地図帳をひっぱり出してその街の名を捜してみた。鼠の文章から本州の北端付近とあたりをつけたのだが、予想にたがわずそれは青森県にあった。青森から汽車に乗って一時間ばかりかかる小さな街だ。時刻表によればそこには一日に五本の列車が停まることになっていた。朝に二本、昼に一本、夕方に二本。十二月の青森になら僕も何度訪れたことがある。そこはおそろしく寒い。信号機まで凍りついてしまう。
僕はそれからその手紙を妻に見せた。「可哀そうな人ね」とひとこと彼女は言った。「可哀そうな人たちね」と彼女はいうつもりだったのかもしれない。もちろん今となってはどうでもいいことだ。
原稿用紙二百枚ばかりの小説の方は題も見ずに机の引出しに放り込んだ。何故だかはわからないが読んでみたいとは思わなかった。僕にとっては手紙だけで十分だった。
そして僕はストーブの前の椅子に座って煙草を三本吸った。
鼠から次の手紙が来たのは翌年の五月だった。
老鼠的信是在临近年关的12月29日才到了我宿舍的信箱,那信也已经很不平整了。转寄的纸条已经贴了两次了。所写的收件地址是原来住的老地方。这也没什么办法,我也没有告诉他我现在住的这个地方。
在四页薄薄绿色信纸上写满了,我反复读了三遍。把信封拿在手里仔细看了那已经模糊不清楚的邮戳。那是我从来没有听说过其名字的城市。我从书架上拿出精细的地图册寻找那个城市的名字。从老鼠的信件来看应该在本州北端或及其附近,但不出预料是在青森县。那个小镇从青森出发坐火车约需一个小时。按时刻表,一天有五班车停那里。早晨两班,白天一班,傍晚两班。在12月时节我也访问过几次青森。那时相当的寒冷。信号机也曾被冻坏。
我把那封信给妻子看了。她也只说一句:“好可怜的人呀。”她也许是在说:“真是可怜的人们呀。”当然到了现在是什么样倒无所谓。
用原稿纸只写了二百页的小说,我连其题目都没看,把它放到了抽屉里。也不知道什么原因丝毫就没有想看。对我来说只看那信就足够了。
然后我坐在暖炉前面的椅子上吸了三棵烟。
老鼠寄来的下一封信是在来年的五月。
老鼠的来信,对他找羊,能提供帮助吗?